勃起してもセックスしない、赤頭巾ちゃん気をつけて

「赤頭巾ちゃん気をつけて」は1969年に芥川賞を受賞しました。わかりやすい文体、マザコンチックな主人公から見える風景描写などが、とても新鮮で、40年以上前の作品にも関わらずとても現代的な文章です。1970年に映画化されています。

三島由紀夫に絶賛され芥川賞を受賞

庄司薫さんは「福田章二」の名前で、1958年に「喪失」で中央公論新人賞を受賞します。しかし、三島由紀夫からは酷評され、江藤淳には「新人福田章二を認めない」という評論まで書かれてしまいます。その後、いくつかの小説を書きましたが消え去り、10年後に「庄司薫」名で復活します。

このときには、「赤頭巾ちゃん気をつけて」を三島由紀夫が大絶賛。「ユーモアとペーソスにあふれた」作品と強く押したため、芥川賞を受賞するにいたります。三島によって殺されて三島によって生きかえった作家といえるでしょう。ただ、このあとは作品を3つ発表しただけで、以降は小説家としては消えてしまいました。盗作疑惑との関係があるのかもしれません。

サリンジャーの盗作と騒がれました

野崎孝が訳したサリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」と文体がよく似ていること、主人公の言い回しによく似た表現があることなどから、「盗作」と騒がれたことがあります。このことが、庄司薫の小説家としての命を短くした可能性はあるのかもしれません。

確かに、文体の軽妙さやユニークなセリフには共通点がありますが、ストーリーは似ても似つきません。内向的青年が進学についてあれこれ考えるという点は似ているとも言えなくはありませんが、この程度の類似性はよくあることでしょう。奥深さという点ではサリンジャーとは比較にもなりませんが、筋立ては軽妙で単純なため、むしろ楽しく読める小説です。

素っ裸の女医をみても何もしない草食系

主人公は足のけがを診てもらった女医の白衣の下が素っ裸なのに気づいて、どうしようもないほど勃起します。なぜか女医さんは彼の股間につっぷして眠ってしまいますが、彼は手を出しません。幼馴染の恋人とはキスもしないプラトニックな関係。半世紀も前から「草食系」男子はいたようです。

「赤、青、白、黒」の4連作

庄司薫さんは「アカ、アオ、シロ、クロ」の4色を作品名として使っています。「赤頭巾」でスタートした後、「さよなら怪傑黒頭巾」「白鳥の歌なんか聞こえない」「ぼくの大好きな青髭」と4連作。これは日本の古来の色表現です。日本にはもともと、この4つしか色はありませんでした。最近は村上春樹さんが「色彩を持たない多崎つくると…」で使っています。

時代設定は、全共闘時代の古いものですが、文体やストーリーは色あせない見事な作品です。