「日はまた昇る」とは勃起のこと?

ヘミングウェイは、高卒で新聞記者として働きますが、赤十字のメンバーとして戦争に出征。そこで重傷を負ったことが、小説に大きな影響をあたえています。第一次世界大戦をへて価値観を変えた世代の小説家は、「ロストジェネレーション」と呼ばれますが、その代表的作家です。

ハードボイルドを作ったひとり

アメリカの探偵小説の基礎をつくったレイモンド・チャンドラーらと並び、簡潔でわかりやすい文体、きびきびとした文章の「ハードボイルド」を創作したひとりです。「ハードボイルド」とは、ハードにゆでること、つまり「かたゆでたまご」のことです。ぎゅっと詰まった文体をそう表現されました。

「武器よさらば」「誰がために鐘は鳴る」「老人と海」などの名作の数々を生み出し、1954年にノーベル賞を受賞しています。モダン・ライブラリー社が選んだ「英語で書かれた20世紀の小説ベスト100」では、「日はまた昇る」が45位、「武器よさらば」が74位に選ばれています。

キューバと葉巻を愛した華やかな人物、とはいえません

ノーベル賞を受賞した1954年には、2度も飛行機事故にあい重傷をおったため、授賞式に出席できませんでした。このケガの後遺症にその後も悩まされつづけ、そううつ症となり、1961年に、ライフル自殺をして亡くなります。

キューバと葉巻を愛し、カクテルの「フローズン・ダイキリ」を好んだかっこいい男性のイメージがありますが、実際の生活は精神的に苦しいものだったようです。孫のマーゴ・ヘミングウェイは女優として活躍しますが、双極性障害をわずらい、アルコール依存症にもなって1996年に薬物により自殺します。祖父の自殺と同じ日でした。

戦争による性の悲劇を描いた傑作

「日はまた昇る」は戦争により障害を負った青年が、仲間とともに自堕落なスペイン旅行をする話です。ケガによって性的不能になり、恋人とセックスできないことが青年の人生に大きな影を落とします。愛が深まってもセックスしない青年にあいそをつかし、恋人は闘牛士と駆け落ちしてしまうという悲しい物語です。「日はまた昇る」とは、「いつかは勃起する」という希望を暗に示しているのかもしれません。

今なら、病院でバイアグラを処方してもらえば、恋人と別れなければならないような運命を背負わなくても良かったのかもしれません。愛とセックスについての問題を投げかけた作品とも言えます。

作品そのものだけでなく、文体においても多くの人に影響を与えた作家の代表作の一つ。大傑作です。