華麗ではない、華麗なるギャツビー

「華麗なるギャツビー」は、何度も映画化された小説です。最近も最映画化され超話題作となりました。舞台は20世紀はじめ、世界大恐慌がおこる前の華やかなニューヨーク。そのためいずれの映画でも、ファションやパーティ風景が見どころです。現代のような軽い時代のバブルではなく、重厚な時代のバブル景気ですので、金の使い方はエレガント。その美しさに惹かれてしまいます。

「ギャツビー」という主人公の名前も時代を象徴するようなかっこよさがあります。もちろん、主人公が自分で作った名前です。おしゃれな感覚を名前にも取り入れ、華やかな時代を背景に夢の世界をつくりあげています。

売れないまま消えていったフィッツジェラルド

作者のスコット・フィッツジェラルドは裕福な家庭の子息です。父の先祖はアメリカ国歌の作詞者であり、母の実家も大金持ち。ただ、父親は事業に失敗して破産したため、母の実家の援助で暮らすという幼少期を過ごしています。そうした経験が、華麗なるギャツビーにも反映されているのでしょう。

大学はプリンストンに進学しますが怠業して単位を落とし続け、第一次世界大戦の開戦にともない従軍して退学、軍にいる間に最愛の人ゼルダと出会い、退役後に結婚します。ギャツビーがオックスフォードの出身といつわる点や、軍隊経験があること、従軍中に恋人と出会うことなどが、作品との関連をうかがわせます。

1925年に「The Great Gatsby」を発表します。評論家の評価は高かったものの、ヒットはしません。「ギャツビー」以前にも以降にも、秀作をいくつか発表していますが、世界大恐慌以降、フィッツジェラルドは忘れられた作家となります。彼の著作は絶版となり、完全にアメリカ文学界では消えてしまいました。

「華麗なるギャツビー」(グレート・ギャツビー)が評価されるようになるのは、フィッツジェラルドの死後何十年も経ってからです。貧乏と妻ゼルダの統合失調症に悩まされながら、名声を得ることなくアルコールにおぼれた生活の果てに、心臓発作で44才にして亡くなります。

ロバート・レッドフォードやレオナルド・ディカプリオなどハリウッドを代表する俳優を主役に起用して5度も映画化された名作の作者の人生は、決して華やかではありませんでした。作品の主人公ギャツビーとも共通するようなさびしい死に方です。

アメリカのモダン・ライブラリ社が選んだ「英語で書かれた20世紀最高の小説」ランキングでは、第2位に選ばれています。不朽の名作です。