性的不能かそれともゲイか…仮面の告白

三島由紀夫といえば天才児。かっこいい姿しかイメージできないのが普通でしょう。父は東大を卒業して国家公務員に一番で合格した秀才。岸伸介とも高校時代からの同窓生です。母親は開成中学の校長の娘。祖父も東大を卒業した官僚です。DNAが良いので、三島は子供のころから神童でした。父、祖父にならって東大を卒業して官僚になります。

しかし、小説家としては、最初から好スタートだったわけではありません。

処女作はほぼ自費出版

東大在学中、19才のときに「花ざかりの森」を出版してそこそこの評判を得ます。しかし実際は、戦時中ということもあって、本がほとんど出版されない時期に、祖父のコネを使って紙を調達できたため本にできただけのことです。小説の評価が高くて出版された、というわけではありませんでした。

世の中に本がない時代ですので、4000部発行した小説は一週間で完売します。実際には紙を自己調達して出版したものであり自費出版も同然。利益はありませんでした。それでも、三島はいい気になり、小説家として生きていきたいと思うようになります。

しかし、官僚一家に育った彼が小説家などになることは許されません。迷いに迷ったあげく、国家公務員試験をうけて役人になります。昼間は公務員として働き、夜は小説を書くという二重生活をして、体力的に限界となり公務員をやめます。ほとんど徹夜続きの息子をみかねた父親が折れたおかげです。

ゲイなのかEDなのか?

公務員をやめて書いたのは「仮面の告白」。戦争がおわり、世のなかがエロティシズムのある作品をもとめていた時代です。官僚をやめるときに父親から「日本一の作家になれ」と条件を付けられた三島は焦り、自らの内面的な葛藤をさらすことで、一発逆転をねらいます。単なる「エロ」ではなく、すごい「エロ」を書くことにしました。

「仮面の告白」は性的倒錯を描いた作品で、三島自身の実体験をベースにした私小説です。前半は男子に性的魅力を感じて勃起する自分を恥じる話。後半は友達の妹に恋心をいだきキスをしてしまうが、勃起しない自分にとまどう話。現代なら、この時点で医者に行き、ゲイなのかEDなのか診てもらうのでしょう。結局、小説の結末はどちらなのかよくわからない形でおわっています。

今ではかなり評価の高い作品ですが、出版当時はたいした評価もなく三島は焦ります。前半部分と後半部分とが、二つの話を無理やりくっつけた感があり完成度は高くないと評価されたようです。三島は、出版社に宣伝を懇願し、役人をやめたことも後悔したと言われています。

その後の三島の活躍は誰もが知るとおり、国際的に認められた最初の日本人作家となります。天才三島が恥をさらして書いた、ぎりぎりの作品はやはり迫力ある名作です。