おっぱいの大きさで売れた!? もう頬づえはつかない

早稲田大学の学生だった見延典子さんが書いた小説「もう頰づえはつかない」は、79年に50万部の大ヒット作となりました。もともとは大学の卒業制作として書かれたものですが、教授の目に留まり出版されることとなりました。ふたりの男子学生の間を行ったり来たりする女子学生の戸惑いと濃厚なセックスを描いたもので、深みや重みといったものはほとんどない、軽い青春文学といえるものです。

文体は平易で読みやすく、難しい言葉は一切出てきません。誰にでも読めるライトな作品で、特に「売れる」要素はないにもかかわらず、大ヒット。その理由は、映画化されたことにありました。主人公を演じたのは、その頃に人気沸騰していた女優の桃井かおりさん。この作品の中で、豊満なおっぱいをおしげもなくさらしました。彼女のおっぱい見たさに多くの大学生が映画館に押しかけ、映画を観た帰り道に本屋に寄って「もう頰づえはつかない」を買って帰ったのです。

映画初主演でいきなりおっぱい女優に!?

桃井かおりさんはすでに60代になった「おばさん」ですが、化粧品のコマーシャルに起用されるなど、その美貌は衰えを知りません。20代の始めにテレビドラマで活躍するなどして知られるようになり、20代後半で「幸福の黄色いハンカチ」で大ブレイク。28才の時の作品「もう頰づえはつかない」で映画初主演となりました。ストーリーにはセックスシーンがたびたび登場するため、当然の流れとして、桃井かおりさんもヌードになります。

売れている女優さんがヌードになる場合、乳首を映さないなどの工夫が凝らされることも少なくありませんが、彼女はそんなことはしません。お椀のようにおおきな胸も乳首のとんがりも、バッチリさらしました。おかげで映画は大ヒット。桃井かおりのおっぱい見たさに、日本中の男子学生たちが映画館に殺到したのです。そして、映画の余韻に浸りたいと、書店に立ちより本を手にして帰るのでした。家に帰って男子学生たちがすることはただ一つ。小説を読み、映画のシーンを思い返して、オナニーをすること。桃井かおりさんをネタに発射したのです。

どうでもいい男たちとのセックスライフ!?

この小説が描く世界は、男からの自立と言えるかも知れません。おっぱい見たさに映画館に殺到した男子たちとは異なり、小説の世界に共鳴した女学生も少なからずいました。女子たちの感想は、「私と似ている」です。ある意味では、普通の女学生を描いたことがヒットの要因であったのかも知れません。では、どういう点が「普通」だったのかと言えば、「男」に従属しているところだたのでしょう。

主人公の女学生は、男に求められるままに体を開きます。「やりたい」と言われれば簡単にペニスを受け入れました。そして、「どうして私は、好きでもない男とセックスしてしまうのだろう?」と疑問を抱くのです。当時の女子たちの多くが、愛のためではなく、セックスのためにセックスしていたのでしょう。男たち欲望を受け止める「穴」にすぎない自分に疑問を抱き、男からの自立を決意したのです。

「もう頰づえをつかない」は内容のない物語でありながら、女たちの自立を促した作品でもあります。桃井かおりのおっぱいでヒットしましたが、時代をとらえた作品であったことも間違いありません。