たった1回セックスしただけの「ノルウェイの森」

村上春樹さんは現代日本を代表する作家、世界的にみても20世紀を代表する小説家といえるでしょう。人によって好ききらいはありますが、すくなくとも「外国人の選ぶ日本の小説家」ランキングをつければ、間違いなくダントツの1位になるはずです。ノーベル賞を受賞した作家をはるかに上まわる知名度です。

今やノーベル賞候補にも名前のあがる村上春樹さんですが、不思議なことに芥川賞を受賞していません。処女作「風の歌を聴け」と、2作目の「1973年のピンボール」が候補となりましたが受賞は逃します。丸谷才一氏は村上氏を「この新人の登場はひとつの事件である」と絶賛しましたが、ほかの委員の同意をえられませんでした。

村上氏の受賞に反対したひとりは大江健三郎さんであり、衝撃的な新人の登場に大きな嫉妬を抱いたからだとも想像されます。かつて、川端康成が三島由紀夫に嫉妬したのと同じように、ほかの委員にとっては村上氏の存在は脅威に感じられたのかもしれません。

「wood」 は森なのか、が問題に!?

タイトル「ノルウェイの森」はビートルズの曲名です。原題は「Norwegian Wood 」。これをレコード会社が「ノルウェイの森」と邦訳して、現在もその訳がつかわれています。しかし、歌詞の内容から「wood」は「森」ではなく「家具」という意味で、当時の訳は「誤訳」といわれています。

村上氏はレコードアルバムに書かれているタイトルをそのまま使ったわけですので、「誤訳」はしていません。ただ、誤訳をそのままつかったところを指摘されて、少々困ってしまったという事件がありました。

村上春樹作品を代表する名作

「ノルウェイの森」は村上作品の中でも、突出した秀作です。1987年に発表され、上下巻430万部というとてつもない売上を記録しました。日本の文学の歴史をかえた大傑作といえます。ストーリーに特別な事件はありません。

自殺した親友の恋人とセックスをして、一方では大学で知りあったセクシーな女の子も気になる。どっちつかずの「僕」は悩んでしまうという物語。たった1回セックスしただけの話で、430万部も売ってしまった村上春樹さんは偉大です。

2010年にトラン・アン・ユン監督により映画化され、そこそこヒットしました。多くの「村上通」により批判もされましたが、主演の松山ケンイチ、菊地凛子、水原希子の名演技、映像の美しさなど、見所も多い優れた作品です。

村上春樹さんの作品を読まずに一生を終えたら、小説を読まずに死んだのと同じことと言えるほどに、現代日本の象徴的作家です。その中でも、「ノルウェイの森」は秀作中の秀作。ぜひ、生きているあいだに読むべき小説です。

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