イギリス文学「三大悲劇」のひとつ、嵐が丘

昔の文学少女はかならず読んでいた小説です。18世紀から19世紀にはやった「ゴシック小説」に含まれる作品。中世ヨーロッパの美術様式を「ゴシック」といいますが、ゴシック様式で建てられた古風な建物を舞台とする物語全般が「ゴシック小説」。超自然的な怖い話が多いのが特徴です。「嵐が丘」もそんな話のひとつですので、少し怖めの作品です。

文学3姉妹の真ん中、エミリー・ブロンテ

E・ブロンテは1818年に生まれ1848年に30才で亡くなっています。「嵐が丘」が発表されたのは1947年ですので、翌年に亡くなってしまったことになります。姉のシャーロットと妹のアンとで、ブロンテ三姉妹と呼ばれますが、3人とも小説を発表しています。シャーロットの作品「ジェーン・エア」も大傑作です。

最初は妹のアンとふたりで詩集を発表しますが不評で、姉のすすめで小説を書いたといわれています。三姉妹はキッチンテーブルに集まり、不要な紙の裏側に小説をつづったそうです。当時は女性蔑視が激しかったため、シャーロットもエミリーも男性の名前で出版しました。しかし姉の「ジェーン・エア」は評判となったものの、エミリーの「嵐が丘」は酷評されてしまいます。

エミリーは自分の作品が傑作として再評価されるのをみることなく亡くなりました。作品も悲劇ですが、本人の早すぎる死も悲劇です。姉のシャーロットも7年後に38才でなくなりました。

愛と憎しみと恐怖を、せまい空間の中で描ききった作品

イギリスの古風な建物には名前がついているそうです。作品名の「嵐が丘」も主人公の住む屋敷の名前。物語の舞台は、ここと、隣の屋敷「フラッシュクロス」のみ。登場人物もこれらの屋敷に住む人たちだけ。狭い人間関係の中で、愛と憎しみのイビツなストーリーが展開します。愛情のゆがみ方は「ぶっ飛んでいる」と言えるほど。

物語の柱となる「ヒースクリフ」という男が失踪したのち、強い愛情と憎しみを抱えて短期間で富豪となり舞いもどってきますが、「いかにして短期間に富を得たか」についてはほとんど説明されていません。その点、文学少女の夢物語的な違和感はあるものの、それを気にさせないほどの、迫力のある展開があります。

旅の訪問者が「嵐が丘」に興味を持ち、使用人から過去のいきさつを聞き取るという構成が、悲劇を客観的に見つめさせるという効果を果たしています。

古典の名作でしか味わえない極端な愛憎を楽しむことのできる名作です。

作品そのものだけでなく、文体においても多くの人に影響を与えた作家の代表作の一つ。大傑作です。